タイヤセンシング技術説明会レポート

開催日:2017年6月23日
場 所:ベルサール八重洲
報告者:津々見友彦

6月23日(金)にベルサール八重洲にて住友ゴムのユニークなタイヤセンシング技術「SENSING CORE」の勉強会が開催された。

住友ゴム工業出席者 
登壇者
・執行役員オートモーティブシステム事業部長 吉岡 哲彦氏
・オートモーティブシステム事業部企画部長 田辺 哲氏
・オートモーティブシステム事業部DWSビジネスチームリーダー 西森 浩一氏
・オートモーティブシステム事業部DWSビジネスチーム課長 川崎 裕章氏
司会者
・広報部長 牧野 久美子氏
冒頭、吉岡オートモーティブシステム事業部長のご挨拶の後、川崎 裕章課長よりご講演を頂いた。

VISION 2020
技術革新を行い、「環境」「安全」「信頼」を更に進化させると言うコンセプト。

タイヤメーカーの環境貢献策として
1)化石資源を使わない→石油外天然資源タイヤ。
2)低燃費性→転がり抵抗を低減しCo2削減
3)省資源→スペアレス商品



スベアレス商品として・・・
1) ランフラットタイヤ
2) タイヤ空気圧低下警報装置
3) タイヤパンク応急修理キット

この要素が重要となる。

●そして、ここからがいよいよ本題!

タイヤ空気圧低下警報装置 が重要。
DWS(Deflation Warning System)
これが今回のメインの内容

●タイヤの空気圧低下警報装置

1)直接式(タイヤのバルブなどに圧力センサーを内蔵し、直接空気圧を計測、センサーや通信用のバッテリーなども必要)

2)間接式(今回の住友ゴム工業の方式。ABSの車輪速センサーを利用し、ソフトウエアで空気圧を推測する。安価でメインテナンフリーなのが特徴)

●タイヤ空気圧の検知(1997年から北米向けに採用)

・作動原理

a)タイヤの空気圧が低下すると回転数が速くなる。(タイヤ経が小さくなるので)
これを利用して他の3輪の回転数と比較し、回転数が速くなったタイヤを空気圧が低下したと、推測するもの。

b)タイヤの空気圧が低下すると→タイヤの剛性が低下→タイヤの共振周波数が低下共振振動数が低下すると波形がズレる。a)とb)の2つの要素から空気圧の低下を推定する。

●SENSING CORE

タイヤだから解る情報をコア(核)とする技術・・・。

「車輪速信号の解析」がキモだ。この解析により得られるのに、「路面の滑りやすさの検知」がある。聞いてみると、なるほど、まさにコロンブスの卵なのだ!(これらの結果を推定するに様々なノイズを適正にフィルタリングもしているとのこと)
           
式S1 タイヤのスリップ率=(車体速度―タイヤ回転速度)/車体速度
上記の式で導かれる。

・駆動輪は微妙に路面と滑りが生じている・・・ことを利用。
そこで、2WDの場合、駆動しない従動輪速と駆動輪速と比較するわけだ。式S1に代入すると、タイヤのスリップ率=(従動輪速―駆動輪速)/従動輪速となり、スリップ率が出てくる。(賢い!)

微妙なタイヤのスリップでもこれでスリップ率がわかり、路面の状況をドライバーにディスプレイで知らせることが出来るのだ。

実際に運転している時は、ウェット路面や雪上で、どの程度の路面ミューなのか不安になるが、このシステムで、物理的にミューの状態を知らせて貰えると分かりやすい。

「少しミューが低いな、気をつけよう!」とか、なるんだろう。

従動輪のある2WDならこれでよいのだが、4WDはどうするのだろう。別途GPSなどで車体速度を知る必要があるらしいが、精度の点ではやはり従動輪方式が今では有利。だが、「準天頂軌道衛星」が4機となる2018年度からは誤差数cmと言われているので、その時には十分実用的になるのだろう。


○低ミュー路で、路面ミュー検知するデモ・ビデオが上映された。

テストコースではまず、高ミュー路でタイヤと路面状態のキャリブレーションを行い、

1)路面情報
2)車の総重量
3)各輪の荷重
4)空気圧

などが数秒でチェックされ水色のバーグラフで進行が解る。そして、キャリブが終わるといよいよスタート。

テストコースの低ミュー路走行シーンでは、路面状況を示すアイコンの色が表示され、また各四輪タイヤの荷重とトータル荷重も表示されている!

路面情報としてミューの違いで通過路面にカラードットが表示される。これらは将来はナビ画面などに、データが蓄積され最新の路面ミューの状態を他の車に知らせることも可能になるという。こうなると事前に路面ミューが分かっているので安全運転な大いに寄与できるだろう。

●各タイヤの荷重表示

・タイヤの荷重が変化すると周波数の振幅が拡大。これで各輪の荷重が確認出来るという!

○それでは、クルマの元々の総重量をどうやって計測するのだろうか?
 それが解らないと各輪の荷重は出てこないはず。
 賢いエンジニアが考えたのは「ニュートンの運動方程式」の活用だ。
 確か中学で習った気がするが、デキの悪い私は居眠りしていたので覚えていない。

 F=ma →  m=F/a (F:力 m:質量 a:加速度)

クルマのブレーキECUからの情報で、エンジン回転や加速度からトルクを推定し、mの質量を導き出すと言うハナレ技を使っている。快挙といえるコンセプトだ!

(もっともブレーキECUからトルクを推定すると言うハナレ技の核心はマル秘らしく、明らかにはして貰えなかった。う~ん。どうやってるんだろう? 当然特許はこのあたりが中心となっているのだろ。本当はここが知りたいのだが・・・。 気がついたAJAJ会員の方はぜひ教えてください。)

○これらタイヤの荷重が分かると、操安性を狙った適切な各輪へのブレーキ力配分など将来的にダイナミックな制御への精密なコントロールの可能性が拓ける。

●今回のプレゼンテーションのまとめ

1)タイヤをセンシングコアとして進化させ、更なる安全、安心に寄与する。

2)ABS用車輪速センサーの解析技術を進化し「SENSING CORE」とする。
  a)空気圧低下の警告(従来技術)
  b)路面の滑りやすさの検知(新技術)
安全性の拡大
  c)タイヤ各輪の荷重の検知(新技術)

ブレーキング時の操安性の可能性を広げ、その他コーナリング時のより正確なライントレース技術が生まれるかも。各輪のタイヤのフリクション・サークルの大きさをリアルタイムで常時把握できるからだ。

2)低価格、メンテナンスフリー。アイディアで勝負している。

●感想

ハードウエアの新たな投資なしで、ありものを有効利用。単にソフトウェアだけで構築すると言う、なかなか賢い方法だと感心した。タイヤパフォーマンスを最大限に活かし、安全により効率的な走りを構築する新しい車の世界が見えてきた。リアルタイムでタイヤと路面の関係を可視化したい!と言う、長年のタイヤエンジニアの夢を実現させたもの。その執念と意義は大きい。
写真
勉強会レポート イベントレポート ボランティアレポート