国土交通省 ITSに関する最近の動向説明会レポート

開催日:2017年8月3日
場 所:国土交通省
報告者:会田肇

8月3日、「ITSに関する最近の動向」と題して、国土交通省が現在取り組んでいる高度道路交通システムについてのAJAJ会員向け説明会が開催された。この日、説明を担当したのは高度道路交通システム推進室の室長を務める西尾 崇氏。アドバイザーとして三菱総合研究所の杉浦孝明氏も出席した。AJAJ側としては15名が参加した。

説明会ではまず、国土交通省が実施してきた「ITSのこれまでの取り組み」の概要説明から入った。交通渋滞は年間約50億時間にも及ぶ時間損失を生み、交通事故についても件数で約66万件が発生し、4400人が亡くなっている。また、渋滞によってCO2排出量の増加も深刻だ。ITSはこれらの諸問題を情報通信技術を核として解決を図ることを目的としている。

日本では1999年に関係5省庁(当時)が連携し、さらに官・民が連携することでカーナビやETC、交通管制、歩行者支援など9つの分野/172 のサブサービスからなるITSシステムアーキテクチャを構築した。すでにこれらのサービスが一体的に導入されて進行中だという。中でもETC2.0については、プローブ情報の収集に力を入れており、今後は走行履歴データや車両の挙動履歴データを収集し、この情報を元に交通情報をはじめ、道路の安全対策など様々な活用を行っていくという。


◆普及が進むETC2.0の賢い活用法を検討

ここからがこの日の本題。最初に説明されたのは「ETC2.0で道路を賢く使う」というもの。2017年3月現在でETC2.0は180万台が累積出荷され、ETC全体からすればまだ3%強でしかないが、国土交通省では今後も着実に普及していくと見ており、それを踏まえた活用方法が検討されている。

具体的には、「混雑状況などに応じた動的な料金の導入」や「災害、事故発生時等の一般道路への一時退出」がある。前者は料金差を設けることで道路の有効活用を狙うもので、後者は給油のために高速道を一時退出しても連続利用したのと同じ扱いにするというもの。国土交通省では年度内にも高速道路外への一時退出社会実験を実施予定で、全国の高速道路では休憩施設の間隔が25km以上ある区間約100区間のうち3カ所を選定している。

また、ETC2.0は、物流管理にも活用して荷待ち時間の短縮やトラック運転の危険箇所を特定してドライバーの安全確保に役立てる計画でいる他、官民ビッグデータによる災害通行実績データシステムの協定を17年5月31日に結んだことも明らかにされた。


◆自動運転の実現へ向けた国土交通省の取り組み

続いて自動運転に対する政策上の取り組みについても報告が行われた。

自動運転はその技術の実用化によって、安全性や運送効率の向上、新たな交通サービスの創出が期待され、それが結果として大幅な生産性向上に資する可能性を指摘。国土交通省としてはこれらの実現へ向け、ルール整備やシステムの実証に取り組んで行く考えだ。

16年9月にはG7交通大臣会合が開かれ、そこでは国際的に調和した未来志向の規制の策定努力を強化することで合意。国連における自動運転に関する国際基準の策定を進める中でのルール整備も、日独主導で促進していくことにしている。また、実証実験としてはトラックの隊列走行や道の駅を拠点とした自動運転サービスを実施。公道における安全かつ円滑な実証実験を検討するワーキンググループも設置したところだという。

中でも自動運転の実現に向けて重要なのが路車協調で、その中枢を司るのが次世代協調ITSを研究する17社による“日本チーム”だ。17社にはトヨタ自動車や日産自動車、本田技研工業の自動車メーカーの他、サプライヤーも含まれる。車車間通信や路車間通信を進めることで、自車単独では検知できない前方状況を先読み情報として提供し、事前の経路変更や車線変更に役立て、合流地点でのスムーズな走行にも役立てる。現在、これらを運転支援や道路管理高度化、共通プラットフォームの計3つのワーキンググループで検討推進中だ。

道の駅等を拠点として自動運転サービスについても報告があった。高齢化が進む日本の中で、特に中山間地域での高齢化比率は深刻だ。そのため、車の運転ができない高齢者が急増し、公共機関の衰退で買い物や病院にも行けない状況が生まれている。また、物流に期待しようにもトラック運転手不足でモノが届かない事例も増えているという。

そこで国土交通省では、全国に1117駅ある道の駅を活用した自動運転サービスを計画している。道の駅には診療所や行政窓口の他、買い物ができる物産館などを設置し、住民は必要なときにスマートフォン等でオンデマンドでバスを呼び出す。道路上には電磁誘導線を埋設することで中山間地域の曲がりくねった道路での安全性も確保する方法も取り入れる予定だ。これにより、物流の効率化が可能となり、住民にとっても生活の足が確保できるだけでなく、地域の活性化にもつながる場所となることが期待されている。

既にこの計画は動き出しており、検証が速やかにできそうな5カ所を選定済み。今夏以降、実験を開始予定で、さらに公募による地域の選定によって8カ所を追加し、ビジネスモデルのさらなる具体化に向けた検討を行う5カ所も選ばれた。なお、実験の模様は報道関係者にも公開する予定だという。

■参加者(敬称略、五十音順)

会田肇/石川真禧照/石黒敏/太田哲也/工藤貴宏/高山正寛/滝口博雄/竹岡圭/津々見友彦/堀越保/松下宏/丸山誠/桃田健史/山城利公/吉田由美

勉強会レポート イベントレポート ボランティアレポート