いすゞ自動車による、AJAJ向けの勉強会が開催された。内容は大まかに「プレゼン」「工場見学」「試乗」という3つ。そのうちの「プレゼン」の内容をレポートしよう。登壇したのは、いすゞの4名の執行役員であった。テーマは「いすゞ自動車のご紹介・取り組みについて」「日本国内の商用車業界の現況について」「商用車の自動運転の取り組み状況」「CN(カーボンニュートラル)車両への取り組み状況」というもの。いすゞ、商用車業界、自動運転、CNという4テーマが説明された。

いすゞ自動車の企業概要と、現在の取り組みについて

最初にプレゼンに登壇したのが、いすゞの専務執行役員で、カーボンニュートラル戦略部門EVPの大平隆氏であった。大平氏は、「2023年に、いすゞは、“地球の「運ぶ」を創造する”を、会社のパーパス(存在意義・目的)としました」とプレゼンを開始した。

このパーパス設定の裏には100年に一度の変革期と言われる今、商用車もいち早く、変革を加速しなくてはいけないという認識を起点に、カーボンニュートラル社会の実現、交通事故被害者ゼロ、労働力不足などの山積する社会課題に対し、これまで“裏方として支える”というスタンスから、“率先して、一緒になって作っていこう”という気持ちの変化があったという。
続いて大平氏は、いすゞの概要を説明した。2024年の売上高は3.2兆円。そのうちわけは、約50%がCV(トラック・バスなどのコマーシャル・ビークル)で、約23%がLCV(ピックアップトラックなどのライト・コマーシャル・ビークル)、そして約18%がアフターセールスであり、残り約9%が、建設用機械や漁船用の産業用エンジンだという。
そんな、いすゞは、“地球の「運ぶ」を創造する”というパーパスを実現するための行動指針となる経営理念体系「ISUZU ID(アイデンティフィケーション)」を定めており、「環境に優しい」「使い勝手が良い」「止まらない、動き続ける(高い耐久性と信頼性に加え、アフターセールスや稼働サポート)」の3つの商品価値で、パーパスにつなげてゆくという。
最後に、大平氏は、「いすゞは、2030年に目指す姿として『ISUZU IX(いすゞ・トランスフォーメーション)』を定めています。我々が目指すのは、安心で斬新で、お客様と社会の課題を解決する商用モビリティソリューションカンパニーになりたいと考えています。そのためには既存事業の強化で、しっかりと稼いで、それを新事業に投資してゆくことでございます」と締めくくったのだ。
国内の商用車事業の現況と、コネクテッドへの取り組み
続いて登壇したのが、いすゞの常務執行役員で国内営業部門EVPとなる能登秀一氏だ。能登氏は、「会社や自治体、自営の方々が、仕事の道具として使う車両が商用車です」と、乗用車と商用車の違いを説明する。多品種少量生産が特徴で、いすゞの小型トラック「エルフ」だけでも約2500種類の車型があり、大型までを含めると約5000もの車型があるという。

続いて、商用車向けの免許区分が説明された。現在では、普通免許で運転できるのは、車両総重量3.5トン未満車であり、いわゆる中型や大型と呼ばれるトラックを運転するには、別途免許が必要だ。そのため、トラックドライバー職の有効求人倍率は2.61倍と、全職種の1.14倍を大きく上回っている。それだけドライバーが不足しているというのが現状であり、それに対して、いすゞは、普通免許で運転できる「エルフミオ」を市場投入しているという。
そうした社会課題に対して、いすゞの取り組みのひとつがコネクテッドサービスだ。商用車のコネクテッドサービスは、「効率化・コスト低減」を軸に提供されている。いすゞの本格的なコネクテッドサービスの取り組みは、2004年の「MIMAMORI(みまもりくん)」からスタートした。これは車載通信機能とGPSを統合したクラウド型テレマティクスで、車両1台ごとの運行状態を見える化し、効率的な車両運行と運行管理業務の負担軽減を実現するものだ。そして、2015年からは車両自体がコンディションを自己診断し、故障の予兆と故障内容を把握することで、故障を未然に防ぎ、また、故障してもすぐに直すことができる、「PREISM(プリズム)」というサービスを提供した。また、2022年からは、物流工程全体の情報を連携させる、新たな商用車情報基盤「GATEX(ゲイテックス)」をスタートさせ、国内物流の最適化を図ってゆくという。
自動運転の取り組みと、自動運転大型トラックの開発状況
自動運転への取り組みを説明したのは、いすゞの常務執行役員で開発部門VPの佐藤浩至氏だ。いすゞは、ドライバー不足と交通事故被害ゼロという社会課題に、自動運転技術で解決を目指すという。具体的には、新中期経営計画「ISUZU IX」で、2027年度に自動運転レベル4のトラックとバス事業を開始すると表明している。そのために、現在、2027年度の実用化に向け、日米のトップランナーの技術パートナーと協創し、実証実験を進めている最中だ。技術パートナーには、大型トラックに「Applied Intuition」、US向け中型トラックに「Gatik」、路線バスに「TIER Ⅳ」、安全論証などに「foretellix」と組む。

ちなみに、商用車が自動運転レベル4を目指すのは、ドライバー不足という社会課題解決が最大の目的となるからだ。ドライバーの存在が必須なレベル3では、ドライバー不足を解決できない。そのために、走行条件を限定した無人走行の自動運転レベル4を目指すのだ。
続いて、佐藤氏は、現在の自動運転大型トラックの開発状況を説明してくれた。現在、いすゞは、第1世代の開発を終了し、AIの活用範囲を広げた次世代モデルを、「Applied Intuition」と共に開発中だという。大型トラックは、車体が大きく重いため、乗用車と比べて、より高性能なセンサーとADスタック(自動運転ソフトウェアとコンピューター)、そしてインフラ支援が必要だ。そのため次世代モデルには、検知性能と冗長性を重視して3種類のセンサー(LiDAR×6、レーダー×8、カメラ×7)を搭載。前方200m以上、360度半径120m以上の検知性能を実現している。
また、インフラ支援は新東名高速道路の、駿河湾沼津SAと浜松SA間の約120㎞の区間で、自動運転車両による実証実験が現在進行形となる。インフラからの支援と高レベルな自動運転を組み合わせることで、世界一安全な自動運転の実現を目指しているという。
ソフトウェアの開発は、従来のVフローモデルではなく、データドリブン開発モデルを採用している。プロジェクトを小さな反復に分けて進める手法であり、柔軟性が高く、早期に問題の改修が可能な手法となる。
現在開発中の次世代型自動運転大型トラックは、2024年8月に「Applied Intuition」と共にデーター収集を開始し、わずか8か月で車両が完成し、データドリブン開発を進めている状況だという。最後に佐藤氏は、「いすゞは、大型トラックだけでなく、中型トラックやバスの開発も進めており、2027年度からの自動運転レベル4のトラックとバスの事業化も開始したいと思っています」と締めくくった。
CN(カーボンニュートラル)に向けた道のりと現在の取り組み
最後のCN(カーボンニュートラル)への取り組みに登壇したのが、いすゞの常務執行役員で開発部門EVP/SVP商品統括チーフエンジニアの上田謙氏だ。

CN(カーボンニュートラル)の前に、そもそも商用車には「使い勝手(積載量/航続距離/稼働時間)」と「経済合理性(車両価格/燃料費・維持費)」の両立が必要であると上田氏は言う。その上で、現在ある商用車の動力源には、エンジン車(ICE)をはじめ、バッテリーEV(BEV)や水素を使う燃料電池車(FCV)、LNG、CNGなどがあり、最近ではCN(カーボンニュートラル)燃料も選択肢となっている。それらの動力源選定には、技術進展、社会動向、商品力、経済性、ライフサイクルのCO₂排出という要件を鑑みて、ひとつの選択肢ではなく、さまざまな状況に応じて、CN(カーボンニュートラル)の動力源を選択してゆく必要があると説明する。
そうしたニーズに対して、いすゞは多様な動力源の車両を用意して対応する。これをマルチパスウェイと、いすゞは説明したのだ。具体的な開発と生産に関して言えば、バッテリーEVは、小型トラックは2023年より生産中であり、バッテリー交換式の小型トラックは工場行内で実証実験中、路線バスは2024年より量産を開始、ピックアップトラックは2025年度から欧州へ導入する予定だ。水素を燃料とする燃料電池車(FCV)は、小型トラックを社会実証実験中で、大型は2023年より実証実験中、路線バスは検討中だという。内燃機関のエンジン車(ICE)は、軽油代替やCNG代替、LNG代替のCN(カーボンニュートラル)燃料を使う車両を、モニター運用や量産中であるという。そして、2030年度までに、すべてのカテゴリーにおいて、バッテリーEVやFCVといった電動車を選択できるようにする商品展開する予定だという。
また、多彩な動力源を用意するマルチパスウェイは、開発・生産のバリエーション増加を意味する。それに対応するために、コンポーネントをつなぐ接続部の共通化・体系化を実現する、モジュール設計コンセプト「I-MACS(イスズ・モジュラー・アーキテクチャー・アンド・コンポーネント・スタンダード)」を導入。各部品をブロックのように組み合わせることで、開発や生産の工数・コスト低減を実現するという。
「いすゞは、こうしたCN(カーボンニュートラル)や、バッテリーEV、FCVといった選択肢だけでなく、自動運転やコネクテッドサービスといた要素を組み合わせることで、お客様の利便性向上と社会交換を目指します。5年後、10年後に、“いすゞって、どんな会社?”とたずねられたとき、“トラックの会社ではなくて、物流を支える総合的な会社だね”と言われるようになるんではないでしょうか」と上田氏はプレゼンを締めくくった。
最も古い自動車メーカーが示唆した新たな姿
いすゞ自動車と言えば、100年を超える歴史を誇る、日本で最も長い歴史を誇る自動車メーカーだ。その老舗メーカーから、将来は「トラックではなく、物流を支える会社」を目指すという話が出たのには驚いた。
一方で、プレゼンの後のマルチパスウェイに関する質疑応答では、いくつもある選択肢の中でも、既存のインフラと車両の再利用が可能なCN(カーボンニュートラル)燃料に、いすゞとしては特に期待しているという旨のコメントも出た。当然ではあるけれど、理想の未来に向かって、やるべきことはしっかり進めつつも、現実的な路線を見失わないという姿勢なのだろう。老舗ならではの着実さがありながらも、先を見る目を備えている点が頼もしいばかりだ。

| ■参加者(敬称略、五十音順) 23名 |
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| 有元正存/石川真禧照/内田俊一/大音安弘/太田哲也/日下部保雄/工藤貴宏/菰田潔/近藤暁史/鈴木ケンイチ/鈴木直也/高山正寛/滝口博雄/竹岡圭/近田茂/西村直人/堀越保/丸山誠/桃田健史/森川オサム/森口将之/諸星陽一/米村太刀夫 |



