ブリヂストン「タイヤ勉強会」その3

栃木県那須塩原にあるブリヂストン・プルーピンググラウンドにおいて開催されたAJAJ会員向けタイヤ勉強会は、ランフラットの新次元として発表されたPOTENZA S001 RFTの披露に合わせたイベントでした。

降雨の中始まったデモンストレーションでは、高速走行中にパンク(右駆動輪のタイヤ空気圧ゼロ)した状況を作り出すものでした。コントロールを失った試験車両は派手な水しぶきを上げながらスピンし、車体はほぼ一回転して停止しました。広いテストコース上でこそ事無きを得ましたが、実際の道路で同じような状況に陥ったらと考えるとゾッとするシーンでした。

我々報道関係者には、既に見慣れた(予想できる)光景ですが、一般のドライバーがそれを目にすることができれば、大きなインパクトを与えることは間違いないでしょう。少なからずタイヤや空気圧に対する気配りが大切であることの注意喚起に貢献できることは確かです。一方ランフラットのPOTENZA S001 RFTで同じ実験をすると、何事も起きません。タイヤはパンク状態なのですが、平然と走り続けて我々の前で普通に停止しました。

これは凄いことです。その後の比較試乗において、乗り味や静粛性の向上がハッキリと体感でき、ランフラットタイヤも第二世代への大きな進化を迎えたことがわかる内容でした。

詳細比較は他のレポートに任せますが、試乗していると僕のイメージの中に、フト近未来の光景が浮かんできました。ランフラット(あるいはパンクレス)タイヤがごく普通の物として普及するとどのような変化があるろうか。

これまたパッケージングデザインの中で不可欠とされてきたスペアタイヤ分のスペースは不要となり、どのような形で活用されるのか。EVやハイブリッドのためのバッテリースペースに。あるいは、掃き出し構造の超低床車誕生など、夢のある展開が期待できます。

しかしその一方、不安材料として浮かんできたのが、タイヤや空気圧について、ますます無頓着になる一般ユーザーについてです。おそらく巷には空気圧ゼロで走り続けるクルマの存在が珍しくないという状況になりはしないかという懸念がぬぐいきれません。

僕の取り越し苦労に終われば良いのですが、既に現在もエア圧なんて気にも止めないドライバーがほとんどです。技術的な進化とともに、メンテナンス頻度の要が極端に減少してきたことにつれて、人はタイヤやエア圧に頓着しなくなってしまいました。ランフラットタイヤではワーニングが装着されますが、その警報に対する危機意識を持ってくれる人の減少傾向は止められないでしょう。

技術の進化と共に素晴らしい製品がリリースされる時代になっても、ドライバーに対する基本教育や、何かにつけて「気をつける」という意識を育んでもらうための努力だけは継続的に行っていかなければならい。改めてそんな思いが頭を巡る勉強会でした。