ボッシュ東松山工場 見学会・技術勉強会

開催日:2012年12月11日
場 所:ボッシュ東松山工場

工業製品の多くは、たくさんの部品から構成されている。我々の身近な製品といえば、自動車です。多くの部品から構成されていると頭では分かっているけれども、操作系など手に触れる部分のみで、目に触れないところのパーツは、ほとんどイメージすらないのが実情ではないでしょうか?

世界でも屈指の部品サプライメーカー、ボッシュ株式会社(以後はボッシュ)の好意で

  1. 1)、工場見学
  2. 2)、勉強会
    1. i 、パワートレイン最適化とダウンサイジング関連技術
    2. ii 、最新ディーゼル技術動向
    3. iii、これからのセーフティにむけて

去る12月11日に開催していただきました。

一般に工場は、油まみれで汚いというイメージがあります。特に自動車のピストンやトランスミッションは、そのイメージが強くあります。ところが、それは文化の違いが大きく影響するということを痛感しました。

ボッシュ以外には、某フランスメーカーの工場を見ましたけれども、やはり合理的に整っているのです。

1)、勿論、主役の生産ラインはしっかりしてあたりまえです、何より脇役の工場設備に無駄のない設計が施されていることに驚かされました。

実際に見学させていただいたのは、ディーゼルのコモンレール関係の部品生産ラインです。

ッシュ東松山工場 見学

ッシュ東松山工場 見学その主要部品である高圧インジェクタは、見た目以上に沢山の部品で構成され、一つ一つ手組みに近い作業工程で仕上げられていました。IT産業が顔負けするほどのクリーンルームで、インジェクタの主要の組み付けが行なわれています。それは、この工場だけではなく、インジェクタを構成する部品一つが約50の工程を経てくるということでも、精度の要求度が高いということで納得できるでしょう。…….言ってみれば、全品検査なのかな?!……

勉強会は

i、ii、iii、の三部構成からなるもの。

iのパワートレインとエンジンに関連する講義では、燃費向上のため動力系統の最適化が、部品開発の主眼になっている、ということでした。

その中で、一番興味を引いたのは、欧州車(ガソリン・エンジン)の多くが採用するダウンサイジングしたエンジンです。

なぜダウンサイジングなのだろう? 以前から疑問でした。

排気量の異なる二種類の動力では、同等の性能であれば、排気量の小さい方が燃費がよくなるのはれき然ですね。

ッシュ東松山工場 技術勉強会今回、『NEDCにおけるダウンサイジングの可能性』という資料で、2リッター排気量を小さくしながら実用的な燃焼消費率を見る実験結果から、約半分の1リッターの排気量が最も効率よく同等(過給器の組合せによる)の性能が得られるというデータで、ダウンサイジングに傾倒することが良く分かりました。

勿論、一つやればすむという単一的なことではなく、現在のエンジンは仔細に技術の積み重ねが燃費の向上につながっています。ガソリン用エンジンの燃料噴射装置も同様です。

直噴用のインジェクタは、多孔式のタイプが多いですが、目的は燃焼室に均一噴射させることです。

しかし、インジェクタ設置場所によって、燃焼室内の混合気にバラツキは発生しやすく、ボッシュはインジェクタ噴口を異口径にすることで、そのバラツキを低減させるための技術開発が行なわれていました。

iiは、ディーゼル技術の動向ですが、ボッシュはEUのそれと同様に燃料効率を上げてCO2低減によって、EURO規制に対応させていくというもの。そのためボッシュは、コモンレールシステムの一部分である高圧ポンプと高圧燃料噴射インジェクタ開発を進めていました。

現在、高圧ポンプはアルミハウジング化によって、大幅に軽量小型化を実現させました。他方、高圧燃料噴射インジェクタは、新設計のバルブを開発し、安価なソレノイドバルブでも1800barの高圧噴射を達成させています。また、2011年後半には高圧油路部の新開発で、2000barの高圧噴射を達成しました。現在は、2014年から導入が予定されているEURO6へ対応するため、さらに高圧噴射を達成させるインジェクタ開発が進められているそうです。開発ロードマップでは、プレミアムセグメント用にピエゾバルブ式の2500bar、普及モデル用にソレノイドバルブ式の2200barが予定されています。

iiiは、さまざまな電子デバイスによる安全技術の講義でした。もともとボッシュは、ABSを早くから開発して製品化してきたメーカー。それを進化させて個々を関連させた装置が、最近の自動車には装着され高度な安全対策が施されています。

衝突予知緊急ブレーキシステムもその一つです。このシステムを実現するためには、危険を予知するための「目」が必要です。ボッシュは運転支援センサーとして、レーダーやカメラの開発もしています。

今後は、周辺状況の認識精度が上がってくれば、完全停止の自動ブレーキシステムの実用化も夢じゃないようです。さらに先を見ると、自動運転システムに到達するのだろうけれども、最後に興味を引かれたのは、狭路通行支援機能です。規制で車線が狭くなっていると、大型車の脇をすり抜けるのにけっこう怖い思いをすることがあります。この時、支援してくれると無駄な減速などしなくなって、後方の渋滞緩和になるのではないだろうか?
とも思ったのです。

今回のボッシュ工場見学と勉強会で、各自動車にメーカーの根幹をなす部品をたくさん開発製造していることを今更ながら痛感いたしました。

ッシュ東松山工場 見学