水素ステーション勉強会

掲載日:2013年9月6日
場 所:(財)エンジニアリング協会 会議室 (虎ノ門)

水素供給・利用技術研究組合 燃料電池バス9月にHySUT が主催する「水素ステーション勉強会」が東京で、また愛知県で「水素ステーション見学会及びFCV 試乗会」が開催された。一般報道関係者向けの限定イベントだがAJAJにもご案内を頂き記者は勉強会に参加した。

まずHySUT (http://hysut.or.jp/)とは、「水素供給・利用技術研究組合」のこと。

HySUTは、エネルギー関連企業や自動車メーカーも含めた19社から成る団体組合で、創設は2009年7月。2010年度までの水素利用社会システム構築実証事業を経て今はNEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)と共同で水素供給に関するインフラ技術・社会実証事業とパイプラインによる水素供給実証を手がける他、水素ステーションに関わる設置・運用等に係る規制合理化のための研究開発を行ってきた。また水素利用技術研究開発事業も展開。燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が策定した「FCV 水素供給インフラ普及シナリオ」の実現を目指して2015年までに水素供給インフラの社会受容性向上と事業成立性の課題を検証・解決し水素供給事業の基盤確立に努めている。

簡単に言うと近い将来のクルマ社会のあり方を見据えて実証試験をしながら、FCV の普及に伴う水素ステーションのインフラ構築について調査研究が続けられているのだ。

今、グローバルに求められている低炭素社会を追求する手段のひとつとして、クルマのゼロエミッション化が唱えられており、EVの実用化は既に始まっている。ただEVは航続距離の不足や充電に要する時間が難点。次代を担う解決策の最右翼がFCV と考えられている。

水を電気分解することで水素が得られることは良く知られているが、その逆作用で水素と酸素を反応させると電力が取り出せる。FCスタック(燃料電池)はむしろ家庭用エネファーム等で知られている。クルマに活用すると一回の充填(満タン5㎏/N㎥)で500 ㎞程度走れる。現在のエンジン車に近い使い勝手が可能となるだけに期待されているわけだ。

有明ステーション(オンサイト型35MPa)そこで水素の供給をどのようにするのが良い方法なのか実証試験が重ねられている。ガソリンスタンドの様にどこででも簡単に水素を補給(充填)できるようにするため、安全対策や高効率化、事業として成立させるための施策など、FCV を走らせながら検証中。

クルマに搭載される水素タンクはどうあるべきか、充填時間を節約するために70MPa で急速充填するには高性能な圧縮機が必要だが水素5㎏/N㎥の充填が3分程で完了する。ただし摩擦熱が発生。それを防ぐ為にはマイナス40度C でプレクールをかける冷凍機が必要になり、より大きな電気エネルギーも要る。タンクの情報を赤外線通信してステーション側の充填を制御し安全性を高める等も重要課題。水素生成時にはCO2 が発生するがその発生量の削減についても研究中だ。

ステーションまで水素を運んでくるオフサイト式よりも、ステーションで水素を生成するオンサイト式を主軸とし、太陽電池等の自然エネルギーを活用することも考え合わせればFCV の普及と共に低炭素化が促進できる。

利用者負担も500 ㎞の走行を4000~5000円で賄えるように考えられていると言う。水素ステーションが収益事業として成立するにはまだ十年以上先の話になるが、遅くとも2025年にはビジネスとして成立させようと模索されている。200 万台のFCV が普及し、水素ステーションが1000ヶ所に設置される頃には、クルマから排出されるCO2 は80%削減できるそうだ。2015年にはFCV の量産車導入も計画されている。

水素に着目すると、近い将来のクルマ社会が見えてくるだろう。

■参加者(敬称略、五十音順)
石川真禧照、鈴木健一、近田茂