コンチネンタル サイバーセキュリティ―勉強会

開催日:2018年7月26日(木)
開催場所:ニューステージ横浜

コンチネンタル ロゴコンチネンタル・オートモティブ株式会社が開催したサイバーセキュリティ―勉強会。当初はなんのこっちゃ?という疑問符が付く中での参加でした。勿論サイバーセキュリティ―という言葉自体は理解しているものの、それがどう、クルマに影響を与えるのかという点については、なかなか理解しにくかったのですが、話を聞いていくうちに「なるほどね」となったわけであります。

近年のクルマは多くの点で車外と繋がっています。例えばナビゲーションがそうでしょうし、ETCなんかもそう。つい最近はトヨタがクラウンとカローラをコネクテッドカーと呼んだことはご存知の通り。今やクルマは外界と繋がって情報を得て、より便利に活用が出来るようになっているというわけ。

ところがこの繋がっているところから悪い輩が入り込んで、情報を盗み出そうとするから、サイバーセキュリティー対策が必要になる…とまあ、アバウトな説明をすればそんなところなわけですが、じゃあ、まだコネクテッドカー黎明期なのに、現実にクルマがハッキングされることなんて、あるの?という質問に対しては、Yes!。実際既にハッキングによってクルマが外部からリモートコントロールされた事例がアメリカにあったということでした。もっともこれは、本当にクルマを乗っ取ることが出来るかを実験したもので、悪意のあるハッキングではなかったものの、実際にやられてしまったジープ全モデル、およそ47万台に対して修正プログラムの無償配布をすることになったというから、メーカー側の痛みは相当なもの。これを機に、サイバーセキュリティーを真剣に考えなくては…という機運が少しだけ盛り上がっているのが今…なのだそうです。

コンチネンタル サイバーセキュリティ―勉強会 風景そして、話は、では具体的にどうサイバーセキュリティーを施していくかという話になるのですが、そいつをいちいち説明すると非常に長くなってしまうので、さわりだけをほんの少し説明すると、コンチネンタルでは2013年にイスラエルで設立されたサイバーセキュリティーの会社アーガス(ARGUS)を2017年に買収。そしてそれより前の2015年にはフィンランドのソフトウェア会社、エレクトロビット(ELECTROBIT)を買収して、この分野に乗り出しました。面白いのはこの3社、即ちコンチネンタルとアーガス、それにエレクトロビットは、いずれもそれぞれ独立した地位にあって同時に協業はするが、場合によっては競合もする、という面白い立ち位置にあるわけです。

まあ、パソコンの分野でもセキュリティーは常に問題視されて、それゆえウィンドゥズの場合などは特に、ノートンだとかマカフィーだとかのセキュリティーソフトをパソコン内に取り込んで、防御しているわけですが、将来的にはクルマのセキュリティーもそれと同じようなことになるというわけです。ただ、自動車メーカーがそれぞれ個別なセキュリティーシステムを構築した場合、ちょっと問題になるのが、コネクティビティーという分野で、A社のクルマとB社のクルマは繋がることが出来ないという事態に陥ることがあり得るわけで、そのために今後課題となるのは、プラットフォームそのものは独自でかまわない、パソコンで言うならOSは何を使ってもいいよ。でも、アプリはどのOSでも動くようにしようね…という取り決めが出来れば、独自のOSを使いながらアプリを共有できるということになって、そのアプリを使えばどのクルマも繋がれる…ということになるわけですが、デメリットとしてはそのアプリがハッキングされた場合は全部のクルマがハッキングされることを意味しているわけで、だからこそ強力なセキュリティーシステムが必要になる…ということになるらしいです。

セキュリティーの問題以上に興味を引かれたのは、今コンチネンタルがメガトレンドとして取り組んでいるのが、①自動運転、②電動化、③コネクティビティーなのだそうで、何故そうなるかというと、全世界で自動車事故による死亡者数は年間130万人に達しているとか。自動化によってそれが減らせること。次にCO2排出量の20%は、渋滞時のものだという事で、そこを電動化で内燃機を切ってしまえば環境負荷を低減できるということ。そして3つ目は、グローバルのインターネット接続時間は今、90億時間もあって、今やいつでもつながることが常識になりつつあるというところから、重要な要素となるコネクティビティーがメガトレンドだということなのだそうです。中でも電動化ですが、コンチネンタルが力を入れるのは48Vバッテリーを使用した電動化技術とEVだそうで、えっ?フルハイブリッドは?と尋ねてみると、それはいずれ消えゆく技術だと考えて、熱心には取り組んでいないようなのです。ビックリ!

そして最後に最も気になっていた、今のクルマって将来的にクラシックカーとして成立するのか?という部分。電子化されて機能が日進月歩する制御技術。今、パソコンをDOSで動かしているものが無いように、電子技術はこのほんの20~30年で飛躍的に進化、高速化を遂げて、今更クラシカルなDOSで動くコンピューターを欲する人がいないように、そんなクルマの電子部品を作って頂けるのか?って話なわけです。極論すると今のプリウスは50年後に果たして動けるのか?っていう素朴な疑問です。これに対する答えは、間違いなく動けます…でした。古いECUなどはちょっと電子技術をかじった人なら自作できるし、すでに情報公開されているものがほとんど。初期の電子制御燃料噴射を使った車が動けないか?というとそんなことはないでしょ?というのがコンチネンタルさんの答えでした。問題はそれを欲しがるユーザーがいるか否かだけ。いつまでたってもクラシックカーは移り行く時と共に、存在し続けるようですよ。機械ものだけじゃなくてHVだってEVだって…。

最後に、今回の勉強会は当初AJAJメンバーのためのものでしたが、参加人数が少なく、媒体の方もお呼びして成立したようです。僕が行った午前中の会は、僕を含めAJAJ参加者がたった4人。午後何人いらしたかわかりません。それに多くの他のイベントも重なってのことのようですが、少々寂しい会でありました。

コンチネンタル サイバーセキュリティ―勉強会 風景
■参加者(敬称略、順不同)
津々見友彦/中村孝仁/橋本玲/堀越保/吉田由美