2025年3月26日にマレリによる、AJAJ勉強会が実施された。勉強会の会場となったのは、埼玉県佐野市にあるマレリの実験研究センターだ。ここにAJAJ会員約15名が参加し、座学と施設見学が実施された。施設見学は、別のレポーターに任せることにして、ここでは座学の内容をかいつまんでレポートしたいと思う。座学で説明されたのが、マレリの歴史、事業本部の紹介、事業部戦略と技術投資、そして技術開発というものであった。順番にレポートしよう。
長い歴史を持つイタリアと日本の企業による合併で誕生
座学のスタートは、マレリの歴史であった。そのルーツは、1919年からのイタリアのマニエッティ・マレリ社と、1939年からの日本のカルソニックカンセイがあり、その2社が2019年に合弁したのが、現在のマレリとなる。事業部としては、ライト関係、電子系、内装系、パワートレイン系、環境技術系、足回り系、アフターマーケット向けという7部門を持っている。
その中で、今回の勉強会の対象となったのが、環境技術系となるグリーン・テクノロジー・ソリューション事業本部だ。グループ全体としては2番目の売上高を誇るという。
具体的に扱うのは、マフラーなどの排気製品と、ラジエターなどの熱交換製品だ。従来からあるエンジン車やハイブリッド車向けには、触媒を含むコンバーター、マフラー、エアコン用コンデンサー、エンジン用ラジエター、トランスミッション用ビルトインオイルクーラー(BOC)などの製品がある。バッテリーEV向けには、バッテリーを冷やすためのバッテリーサーマルプレートや水冷コンデンサー、チラー、モーターを冷やすビルトインオイルクーラー(BOC)を提供する。
サプライヤーとして時代を読んだ選択を
続いて説明されたのが事業部戦略と技術投資であった。これはEVシフトが喧伝される今、非常に興味深いものであった。まず、前提として現在の電動化の波を前に、自動車部品サプライヤーとしてのマレリが直面した課題が説明された。それは「バッテリーEV関連技術・製品に投資を集中させるべきか?」という問題だ。
ほんの3年前となる2022年の時点では、2030年代になるとバッテリーEVのシェアは市場の半数を超えるという予測が強く支持された。その場合、限られた経営資源をバッテリーEVに全振りするべきではないか、と考えたくなるものだ。しかし、マレリは急激なEVシフトには懐疑的であったという。それは「環境保護にどれほど寄与するのか?」「ドライバーに受け入れられるのか?」「ビジネスとして成立するのか?」という疑念があったからだ。そのためマレリでは「バッテリーEVの波は進むが、すべてがひっくり返るスピードではない」「現実的には、ハイブリッドが当面大きなシェアを持つ」「内燃機関エンジンの開発改良スピードは大きく減速する」という予測を立てた。そして、「バッテリーEVに偏りすぎない投資」を選択することになる。
投資としては、「エンジン車・ハイブリッド車向けの軽量・小型・廉価な排気システム(商品名:リーンエキゾースト)」と「ハイブリッド車・バッテリーEV用の高性能熱交換器」の投資を集中することにしたという。
そうした選択の結果が現在となる。
現在、世界的にバッテリーEVの販売は踊り場を迎えた。バッテリーEV普及の予測は、大幅な見直しを受け、EVシフトのスピードは、より緩やかなものになると見られている。そこで、マレリが開発していた、軽量・小型・廉価な排気システム(リーンエキゾースト)や高性能熱交換器は、自動車メーカーから強い引き合いがあったという。実際に、バッテリーEV用の高性能熱交換器のバッテリーサーマルプレートは、中国/北米/欧州向けの量産車に採用され、2024年から生産を開始している。PHEVのAT向けビルトインオイルクーラー(BOC)は2026年からの生産を、リーンエキゾーストは2028年からの生産開始が予定されている。
こうした事例を経て、マレリは「これまでは技術一辺倒であったけれど、これからはサプライヤーとしての戦略と事業性もあわせ、技術/戦略/事業性のバランスが重要だ」と考えるようになったという。
電動化時代に生まれた最新の排気と熱交換の技術
マレリが得意とする熱交換器製品の中で、トランスミッション内に組み込むビルトインオイルクーラー(BOC)は、世界シェア19%(2021年)で世界ナンバー1であるという。自動車メーカーだけでなく、アイシンやジヤトコなどの変速機メーカーにも採用されているというのだ。その技術を、e-Axle向けに流用した製品を開発したという。また、エンジン車よりも放熱量の少ない電動車用に、対応する放熱量の小さな熱交換器を開発するという。
また、軽量・小型・廉価なリーンエキゾーストには、電動化時代にこそ、求められる技術だという。バッテリーやモーターを使うハイブリッド車は、エンジン車よりも排気系の重要度が低くなる。だからこそ、排気系は、より軽量・小型・廉価なシステムであることが求められるというわけだ。
そのシステムは、コンバーター/GPF、センターマフラー、メインマフラー、排気システム素材までが含まれる。触媒を含むGPF一体型コンパクト二重管コンバーターは、より早く温まり、より長時間温かいままを保つ。その特性は、モーター走行の多いハイブリッド車に向いているという。シータレゾネーターは、床下に大型バッテリーを搭載するPHEV向けの技術だ。排気管の中を二重化して、その一方を共鳴室にする。消音機能を保ったまま、より小さくすることができ、バッテリーのためにスペースを提供するという。グラスウールレスのマフラーは、微細孔を通るときに音の振動エネルギーが熱に変換されることを利用する。グラスウールなしでも消音機能を実現するため、より軽量で、より廃棄が楽になるという。
自動車を巡る環境は、大きく変動しているが、そんな中でも、しっかりとマレリは生きる道を模索し、そして切り開いていた。そんなことが実感できる勉強会であった。






