ボッシュ・グループ 技術戦略の方向性

開催日:2010年2月24日
場 所:

技術戦略の方向性 講演風景去る2010年2月24日、ボッシュ(株)本社において表題をテーマとしたマスコミ向け勉強会が開催された。ここでまずプレゼンテーションされたのは概ね2020年前後を見据えた車両総重量6トン以下の普通乗用車/商用車における自動車技術の進化及びその傾向に対応した基本となる技術戦略である。

具体的には現時点におけるパワーユニットの主流であるガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、近年北米を中心に普及が進んでいる代替燃料エンジン、日本を中心とした各種ハイブリッド、そしてごく一部にピュアEVという勢力図が、2015年から2020年頃には新たにHCCI(予混合圧縮着火)、レンジエクステンダ(シリーズハイブリッドの進化形)を加えた複雑な体系となり、さらに将来的にはピュアEV、燃料電池車、レンジエクステンダという勢力図を経て最終的にはバッテリー及び燃料電池のEVのみに集約されるという予測が成り立つとのことだった。

技術戦略の方向性 講演風景こうした技術予想において重要なことはハイブリッド、レンジエクテンダ、そしてEVを技術的に支える立場にあるリチウムイオンバッテリーと進化と安定供給の確保にあり、前者においては同容積ガソリンと比較して現時点ではおよそ1/100と評価されているエネルギー密度を二倍の1/50まで改善すること、そして後者については将来的な需要をカバーするためには生産コストを下げつつ現在の約10倍の生産量を確保しなければいけないということ。これを実現するためにはバッテリーの規格標準化およびメーカーの枠を超えた集約化を図らなければ実現は難しいという評価。単に技術的な展望に止まらず普及に至るまでの具体的な課題にまで言及していたのが印象的だった。

続いてより近々の問題点として検討されているというのが、いわゆるESCに代表されるセーフティーハンドリングデバイスの日本国内における普及について。現時点で新車の試乗レポートなどではほぼ確実に言及されるESCではあるものの、実際の日本国内での普及率となると2008年の時点でわずかに19%。この数字は北米の58%、欧州の55%はいうまでもなく、韓国の23%にも劣るという厳しい数字であり、全世界における33%にも及んでいない。

モータージャーナリズムに携わる立場にあればテストコースなどでの試乗を通じてESCの優れた安全性は経験として認知している項目ではあるものの、一般ユーザーにとってみればブレーキアシストと共にその認知度は未だ低く、ESCを標準装着するのが上級モデルのみというグレード体系も問題となっている様に思えた。さらに日本には軽自動車というカテゴリーが存在しており言うまでもなくこの分野での装着率は0%である。ここもまた早い時期でも対策が必要なのは間違いない。

この他、プレゼンテーションはガソリンエンジンとディーゼルエンジンにおける新技術についても時間を掛けて行われた。

さて、これらのプレゼンテーションの結果、最終的に導き出された結論の要旨は以下の通り。パワーユニットの内燃機関から電動へのドラスティックなスイッチはもちろんのこと、それを支える補機類のいずれも将来的にパーツサプライヤーに及ぼす影響は少なくない。ここではサプライヤー同士の摺り合わせなど将来的な課題はまだ山積しているものの、たとえ内燃機関が市場から消えても新たな技術の導入に伴って自動車そのものが複雑化していくことは間違いない。その中でボッシュの様な総合部品メーカーが果たしていく役割は増加こそすれ減少することはありえない。その中で新たなビジネスモデルを構築し、場合によってはインフラ整備においても主導するなど市場をリードしていく体制を構築して行くことこそが重要となる。これは近未来を想定した自動車業界動向に対する総論として的を射ている。

■ボッシュ戦略勉強会出席者(38名)
有元正存、有山勝利、飯田裕子、石川芳雄、石黒敏夫、太田哲也、岡崎宏司、岡崎五朗、岡島裕二、片岡英明、桂伸一、川上完、日下部保雄、工藤貴宏、菰田潔、佐藤久実、鈴木健一、鈴木直也、瀬在仁志、滝口博雄、田草川弘之、竹岡圭、近田茂、徳大寺有恒、長島達人、西村直人、萩原秀輝、福永頌、藤島知子、堀越保、松下宏、松田秀士、矢吹明紀、山口京一、山崎公義、吉田由美、吉田匠、米村太刀夫