BOSE AUTOMOTIVEの主催によるANCに関する勉強会

開催日:2010年7月28日
場 所:BOSE AUTOMOTIVE恵比寿本社

AJAJ理事会 渉外担当(勉強会等) 伏木悦郎

〖アクティブ・ノイズ・コントロール(A.N.C)?どこかで聞いたことが…。〗

 アクティブ・ノイズ・コントロールANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)とは、クルマの品質に関わるN.V.H(nise,vibration,harshness=騒音、振動、乗り心地の粗さ)のなかでも、基本的に静粛性の高い上級車のクォリティに関与する”こもり音”に焦点を絞り、積極的に制御して効果を求める装置。

プレミアム自動車音響メーカーとして知られるBOSE AUTOMOTIVEでは、北米インフィニティ向けのプレミアムサルーンを中心にプレミアムブランドに相応しいオーディオという立場からかねてから日産とは親密な協力関係にあったようで、今回のフーガ(インフィニティM)にオプション設定されているANCもその一連の流れの中にあるもの、と考えてもいいようです。

発生音源に対して、180度位相の異なる音を発生させて調和を試みるというANCのアイデアは、1991年デビューのブルーバード(U13型)のハードトップHTモデル、ARXで市場導入されていました。その後長らく採用の機会は閉ざされていたようですが、最近ではトヨタのクラウンハイブリッドにCANが採用され、その直接のライバルとなる日産のFUGA(フーガ)でもリバイバルとなった。この頃ではあまり語られることがなくなりましたが、日産vsトヨタのようなライバル関係は、クルマの古典的な語り口として貴重ではないでしょうか?

 

〖音の話〗

さて、ここで問題となるのは当然『音』です。音というのは、圧力波であり、空気粒子の粗密波ということです。頭から重い話になりますが、音の性質は、15°Cで約340m/secのいわゆる音速で、1秒間繰り返し回数である周波数やその波長を意味する周期、波の大きさを表わす振幅、並の山と谷の位置関係を言う位相…などといった、遥か学校時分に習った単語がゴロゴロ登場します。

高調波 スライド今回の勉強会で耳新しかったのは『高調波』という言葉です。音楽やオーディオ、エンジン開発のNVH担当者といった人々には常識の範疇ということになると思いますが、私は初めて聞く専門用語でした。

それは周期性を持つ現象ということで、たとえば600rpm(毎分600回転)のエンジンでは、10cycle/1sec(1秒間に10サイクル)、つまり0.1秒ごとに同じ状態(波形)になる。0.1秒毎に同じ状態になるのは、10Hz、20Hz、30Hz、40Hz…といった10Hzの整数倍の周波数の正弦波で、それらを10Hzの高調波という。要するに周期性のある波というのは、基本波の高調波の和という、文系の頭には受け入れるのが困難な文脈ですが、まあここはそういうことなのだと鵜呑みして下さい。

たとえとして有効かどうかは怪しいですが、4ストロークエンジンの1気筒のノイズを考えると、一回転毎に同じ状態となるピストンやクランクシャフトのサイクルでは回転数の整数倍の高調波が存在し、2回転毎に同じ状態となる吸気・排気サイクルでは回転数の半整数倍の高調波が存在します。