第一回ITS分科会・拡大版を開催

開催日:2019年3月18日
場所:国際文化会館 講堂

【はじめに】

AJAJでは2014年より「ITS分科会」を発足させ現在に至り活動を行っています。当ITS分科会は、自動運転技術に代表される最新のITSやそれを取り巻く環境などの知見を、自動車メーカー/サプライヤー/関係省庁のエキスパートに取材、もしくは講演をして頂くことで、AJAJ会員のなかで共有していくことを狙いとしています。

また、我々の声を発信する場である媒体関係者の皆様とも志を共にすることで、有名無実化しかねないITSを広く自動車ユーザーの方々にも共感して頂きたいとの想いも込めています。
そうした中、2019年3月18日に「ITS分科会・拡大版」を開催致しました。これまでITS分科会は7~10名のAJAJ会員をメンバーとして構成し、2年を一区切りとして活動を行ってきましたが、今回は新たな取り組みとしてITS分科会・拡大版の参加対象をAJAJ全会員にまで広げました。

第一回ITS分科会・拡大版

【開催の趣旨と目的】

第一回ITS分科会・拡大版 目的OHPAJAJ内に設立されているITS分科会の拡大版としての位置づけです。AJAJ会全員を対象にした「自動運転技術と先進安全技術を議題とする勉強の場」として催しました。開催当日は1時間30分と限られた時間であることから自動運転技術や先進安全技術の初歩的な議論は行わず、2020年以降に実用化されるであろう、SAEレベル3以上で必要となる高度な知識や、執筆活動に不可欠なジャーナリストとしての知見を高めることを目的としました。

【開催の概要】

  • 参加者数/合計35名
  • 開催形式/有識者3名をパネラーとしてお招きし、①各人の得意分野に対する10分程度のプレゼンテーションを行う(合計30分間)。②パネラーとファシリテーターによるディスカッション(20分間)。③最後に会員からの質問時間(35分間)という3部構成。ファシリテーターはITS分科会リーダーの西村直人が担当した。

【ご参加頂いたパネラー(順不同)】

  • 国土交通省 道路局 道路交通管理課
    安部勝也 様
  • トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント株式会社(TRI-AD)
    田口 康治 様
  • 三菱総合研究所 営業本部 副本部長
    杉浦孝明 様

【当日のようす】

第一回ITS分科会・拡大版 本日の流れITS分科会・拡大版は定刻の14:00に石川副会長の挨拶からスタート、続いてパネラーによるプレゼンテーションが行われた。

トップバッターの国土交通省・安部氏からは、これまで国土交通省道路局が主体となって行ってきた自動運転にまつわる実証実験の内容や成果が報告された。続けて安部氏は「地方都市で自動運転の実証実験を行うと、高齢者の方々はすぐさま自分の住んでいる地域で自動運転が実現すると誤解されることもあったが、概ね、受け入れられ実用化に向けた手応えを感じた」と実情を紹介してくれた。

続くTRI-AD田口氏からは、トヨタが自動運転技術開発に取り組む意義として「毎年世界中で100万人が交通事故により命を落とされている事実を受けて、自動運転技術を用いてその数を減らすことが大きな目標である」と告げられた。また、人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間(パートナー)のような関係を築くトヨタ独自の自動運転の考え方である「Mobility Teammate Concept」の紹介のほか、SAEレベル3以上で必至となるシステムから人への権限委譲で考えられる課題とその克服方法が紹介された。
三菱総合研究所の杉浦氏からは、SAEレベル2までのADASを正しく使用していることがレベル3以上を迎え入れる手段としては望ましいことや、クルマが走行する場である「走行空間」のコントロールがしやすいことからレベル3以上の自動運転技術は高速道路での使用が最初に認可されることが紹介された。また、運行供用者の概念や、自動運転技術を搭載した車両が関係する交通事故発生時に民事/刑事の両側面で責任の所在が問われること(例/民法709条や718条)、さらには日常行う運行前点検では高度な車載センサーのチェックが難しくなることから、将来的にはOTA(Over the Air/無線通信)を用いて点検を自動化することなどが紹介された。その後、ファシリテーターを交えたプレゼンテーション内容の部分的な深掘りに続き、AJAJ会員との質疑応答が予定終了時間を超えても行われた。

今回のITS分科会・拡大版は新たな試みであったが、これからITSの分野に深く足を踏み入れていこうとする会員にとっては新鮮であったのではないかと思う。一方で、自動運転技術は広義に渡る分野であるため、大人数を対象とする今回のようなイベントでは技術の初歩的な会話を織り込む必要性があり、故に議論が散漫となるところも見受けられ、ここが第二回ITS分科会・拡大版を開催するにあたっての課題ではないかと認識した。

なお、今回の結果を次回以降へとつなげていくため、ITS分科会では参加されたAJAJ会員に対して無料のWebサービス「Googleフォーム」を活用した事後アンケートを実施。回答として寄せられたコメントは、後日、当ITS分科会レポートページに掲載する予定です。

■参加者(敬称略、五十音順)
会田肇、石井昌道、石川真禧照、太田哲也、岡崎宏司、岡崎五朗、加瀬幸長、日下部保雄、工藤貴宏、斉藤慎輔、佐藤篤司、鈴木健一、鈴木直也、高山正寛、近田茂、津々見友彦、戸田治宏、西村直人、萩原秀輝、藤島知子、堀越保、松下宏、丸山誠、森川オサム、山田弘樹、吉田由美